フォールド済みBTNのスタック別ICMコール比較|14スポット検証
結論から言うと、保存済みのICMソリューションでは、BTNが10bbのときAJoは100%コールでコールEVは+0.270pp、BTNが5bbのときは100%フォールドでコールEVは−0.268ppでした。 SBは40bb、BBは20bb、コール額は19bbで同じです。違うのは、すでにフォールドしたBTNのスタックだけではありません。総チップ量、各プレイヤーの到達レンジ、SBの小さいレイズサイズも変わります。
そこで、同じSB・BBスタックを持ち、BTNスタックが異なる7組・14シナリオを調べました。短いBTNのシナリオでは、7組すべてでBBの集計コール率が低く出ました。ただし、これは保存された別々のモデルに共通して見えたパターンです。「BTNが短くなったことだけが原因」とする因果実験ではありません。
保存済み出力:同じ19bbコールでAJoの符号が反転
各プレイヤーが0.12bbのアンティを払った後、ブラインドを置く前のスタックをBTN/SB/BBの順に5/40/20bb、または10/40/20bbとします。BTNがフォールドし、SBは20bbまでレイズしてBBをオールインに追い込みます(SB自身には20bb残ります)。BBはすでに1bbを置いているので、21.36bbのポットへ19bbを追加する判断です。
残り賞金は元の賞金総額の15.19%、10.96%、7.94%で、合計34.09%です。保存済みEVの単位は残り賞金総額に対するパーセントポイント(pp)で、フォールドを0としています。+0.270ppは、残り賞金が1万ドルなら27ドル相当のモデル上の差です。チップEVやbbではありません。
| ハンド | BTN 10bb コール頻度 | BTN 10bb コールEV | BTN 5bb コール頻度 | BTN 5bb コールEV |
|---|---|---|---|---|
| AJo | 100% | +0.270pp | 0% | −0.268pp |
| ATo | 100% | +0.184pp | 0% | −0.402pp |
| 88 | 100% | +1.342pp | 100% | +0.122pp |
| 55 | 14% | −0.012pp | 0% | −1.132pp |
| KQo | 62% | +0.002pp | 0% | −0.644pp |
AJoとAToはコールEVの符号まで変わります。一方、88はBTNが5bbでも+0.122ppで100%コールです。「自分より短いスタックが残っているなら全部フォールド」とは読めません。KQoの+0.002ppは保存形式のEV刻み1段分で、55の混合もコールEVが−0.012ppです。こうした境界値から普遍的なカットオフを作るのは危険です。
独立計算:5bbのBTNがいるとフォールド価値が高い
次に、保存済みのハンド別EVとは別に、スタックと賞金だけを使って静的ICMを計算しました。BBがフォールド、勝利、敗退した後のチップ配分を列挙し、各着順の確率と賞金を掛け合わせます。引き分けと将来のハンド進行は扱いません。
| BTN | フォールド | 勝利 | 敗退 | 引き分けなしの 損益分岐勝率 |
|---|---|---|---|---|
| 5bb | 34.125% | 39.289% | 23.291% | 67.7% |
| 10bb | 32.842% | 38.351% | 23.291% | 63.4% |
損益分岐勝率は (フォールド価値 − 敗退価値)÷(勝利価値 − 敗退価値) です。BTNが5bbなら、先に敗退せず残る価値が相対的に大きく、必要勝率は4.3ポイント高くなります。ただし、実際のハンドには引き分けがあり、SBの到達レンジもシナリオごとに違います。この67.7%をAJoの必要エクイティとして保存済みEVへ代入してはいません。
レンジの変化:SBは広くオールイン、BBは狭くコール
BTN 5bbのモデルでは、SBの20bbレイズ(BBに対する実効オールイン)に到達する重みは946.512コンボ、SBのカード除去前レンジ1,326コンボの71.4%でした。BTN 10bbでは646.112コンボ、48.7%です。それでもBBの集計コール率は前者で4.0%、後者で11.6%でした。「相手のオールインが広いからコールも広げる」と賞金圧力を無視して結論づけることはできません。
| BTN | SBオールインの 重み付きコンボ | SBオールイン率 | BBコール率 | SBの小さいレイズ |
|---|---|---|---|---|
| 5bb | 946.512 | 71.4% | 4.0% | 3.5bb |
| 10bb | 646.112 | 48.7% | 11.6% | 2.5bb |
両方の保存済みツリーにはリンプと小さいレイズもあります。TT〜AAはこのオールイン到達レンジに含まれず、小さいレイズ側へ回っています。BTNスタックと一緒にSBのアクションメニューも変わるため、差を「フォールド済みスタックだけの効果」とは呼びません。
14シナリオ:短いBTN側は7組すべてで低いコール率
同じSB・BBスタックを持つ7ファミリーを抽出しました。最初の2組で仮説を見つけ、残り5組は数値を見る前に検証用として分けました。短いBTN側のBB集計コール率は、検証用5組を含む全7組で低くなりました。
| SB/BB | 区分 | BTN 短/長 | BBコール率 短/長 | 平均移植 リグレット | 95%点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10/20bb | 検証 | 5/30bb | 19.9/34.0% | 0.0396pp | 0.374pp |
| 10/30bb | 発見 | 5/20bb | 18.6/31.0% | 0.0221pp | 0.216pp |
| 30/10bb | 検証 | 5/20bb | 10.0/34.2% | 0.1390pp | 0.862pp |
| 40/20bb | 発見 | 5/10bb | 4.0/11.6% | 0.0295pp | 0.268pp |
| 20/30bb | 検証 | 10/25bb | 10.1/13.9% | 0.0108pp | 0.015pp |
| 5/40bb | 検証 | 15/20bb | 54.9/58.1% | <0.001pp | 0.000pp |
| 40/5bb | 検証 | 15/20bb | 57.5/60.2% | <0.001pp | 0.000pp |
移植リグレットは、短いBTN側での最良保存アクションEVから、長いBTN側のコール/フォールド混合を同じハンドへ移したEVを引いた値です。相手を再計算せず、移植先の継続戦略を固定した局所診断にすぎません。SB30/BB10では平均0.1390pp、95%点0.862pp。主比較のSB40/BB20では平均0.0295pp、95%点0.268ppで、移植先の保存済み混合自体は同じ計算で平均約0.00001ppでした。
レンジが狭くても、EV差が小さい場合がある
SB40/BB5では、BTNが20bbから15bbになるとBBコール率は60.2%から57.5%へ低下しました。しかし、長いBTN側の混合を移した平均局所リグレットは0.001pp未満、最大でも約0.040ppです。平均値はEVの保存刻み0.002ppより小さく、細かな小数に戦略的な意味を持たせられません。
集計方向と個別ハンドの方向が一致しない例もあります。SB5/BB40の65sは、BTN 15bbで91.2%コール、BTN 20bbで63.6%コールでした。BTN 15bb側のコールEVはわずか+0.002ppです。レンジ図の色が変わったら、まずEV差を確認するべきで、頻度差だけを大きなミスとみなすべきではありません。
実戦に持ち込む前の5分レビュー
- 最初の表のEV列を隠し、BTN 5bb/10bbそれぞれでAJo、88、55を予想します。
- 残り全員のスタック、賞金、アンティ、実効コール額、相手がそのアクションへ到達したレンジを書きます。
- GTO Geckoで利用可能なプリコンピュート済みスポットをオフテーブルで開き、レンジ、混合頻度、EVの推定値を比較します。利用できるライブラリはプランによって異なります。
ICMの価値変換を先に復習するならICM戦略の基礎、ファイナルテーブル全体の判断枠組みはファイナルテーブルのICM戦略を参照してください。
データと再現可能な集計
公開資料には、14シナリオのノード要約JSON、7組の比較とリグレットJSON、主要ハンドJSON、図示レンジの正確なJSON、レンジ構成JSONがあります。日本語版図表の集計式、単位、再生成手順は日本語の図表資料、研究全体の静的ICM計算、局所リグレット、感度検査、限界は英語の研究READMEに記録しています。
調査方法と限界
2026年9月16日に、3人残りのシナリオツリー14本と圧縮された意思決定データを取得しました。BBの2,366ハンドクラス行はすべて正の到達重みを持ち、そのうち検証用10シナリオは1,690行です。独立した標本が数千あるのではなく、比較単位は関連する7スタック組です。元モデルは参加者1,000人・入賞150人で、残り3賞だけを使い、バウンティは含みません。
頻度は0.4パーセントポイント刻み、EVは0.002pp刻みです。BB集計はペア6、スーテッド4、オフスート12コンボで重み付けしました。SBのオールイン重みは到達重みと条件付きオールイン頻度を掛けています。相互のカード衝突や、フォールドしたBTNのカード除去効果は共同出現分布として再構成していません。
元ソルバーのバージョン、抽象化方式、収束精度、将来ゲーム設定は不明です。正の頻度が付いたBBのアクションのうち10件は、同じ保存ノードの最良アクションより0.02pp超低く、最大差は0.082ppでした。したがって混合部分が厳密に無差別だったとは断定できません。見出しで扱ったAJoと88の比較は、この10件には含まれません。
静的ICMは将来のブラインド移動や座席変化を表現しません。移植リグレットも相手を再計算せず、トーナメント全体の一貫した方策、実戦の人間の成績、金銭的な結果を推定しません。元の独自ツリー全体は公開資料に含めず、選択した集計と図の根拠だけを公開しています。ヘッダー画像はAI生成の記事用イラストで、レンジ図、比較図、表は保存数値から決定論的に作成しました。
出典と確認日
- 日本語版図表の集計式、単位、再生成手順:ライブラリデータ取得日2026年9月16日。日本語資料更新日2026年9月28日。
- 英語の研究README:静的ICM計算、局所リグレット、感度検査、研究全体の限界。2026年9月28日再確認。
- GTO WizardによるラダーリングとICM圧力の解説:一般的な戦略背景の参照。2026年9月28日確認。
- ICMIZERによる将来ゲーム・シミュレーションの解説:静的ICMが将来局面を省く限界の参照。2026年9月28日確認。
- 日本向けApp StoreのGTO Gecko掲載情報:現在のアプリ機能と日本語対応の確認。2026年9月28日確認。