ショートデッキの「3と6の法則」は正確?1〜20アウツを全数検証
結論から言うと、「3と6の法則」はアウツが少ない場面では便利な暗算ですが、正確な確率式ではありません。クリーンアウトが5枚なら、アウツ数 × 6 = 30.00%で、リバーまでの正確な完成確率30.11%とほぼ一致します。一方、8アウツでは近似48%に対して正確値は45.59%、15アウツでは近似90%に対して正確値は74.19%で、15.81ポイント高く見積もります。
本稿では、アウツ数1〜20のそれぞれについて、ターンとリバー2枚の順序を区別しない組み合わせ(ランアウト)465通りを数えました。さらに別のPythonプログラムでも計算し直し、数式で求めた値と照合しています。正確な式、近似を使える範囲、そして「そもそも何をアウツに数えるべきか」を順に確認します。
開示:GTO GeckoとShort Deck Poker TrainerはいずれもGTO Solutions ASの製品です。以下の確率はストア掲載文とは独立に、本文で示す方法によって算出しました。本稿は学習用であり、結果や利益を約束するものではありません。
計算の前提となるショートデッキのルール
ショートデッキ(ショートデック、6+ホールデム、シックスプラスとも呼ばれます)は、2〜5を除いた36枚のデッキでプレイします。PokerStarsの公式6+ルールとKKPokerの日本語ルールでは、フラッシュがフルハウスより強く、A-6-7-8-9もストレートとして扱われます。一方、PokerStars Learnは、スリーカードをストレートより上に置くルールもあると注記しています。役順やアンティなどの強制ベット方式は運営者・ルームによって異なるため、実際のハウスルールを先に確認してください。
フロップ時点で自分に見えているのは、ホールカード2枚とコミュニティカード3枚の計5枚です。したがって、見えていないカードは次の通りです。
分母がホールデムと違う
36 − 2 − 3 = 31枚
ここが「2と4の法則」をそのまま使えない理由です。ショートデッキでは、クリーンアウト1枚あたり次の1枚で約3.23%。通常のホールデムの約2.13%とは分母が違います。
ショートデッキでアウツを引く確率の正確な式
Oは、ターンでもリバーでも変わらないクリーンアウト数とします。「変わらない」とは、同じカードが両方のストリートでアウツとして残ること。「クリーン」とは、そのカードで数えたい改善が起こり、既知の情報上、相手の上位役や強いリドローにつながらないことです。
この計算では、相手の手札やレンジによるカード分布の偏りは考慮せず、31枚の未知カードを等確率で扱います。求めるのは、固定したアウツの集合から少なくとも1枚を引く確率であり、ショーダウンで勝つ確率ではありません。
フロップからの完成確率
次の1枚:O / 31
リバーまで:1 − ((31 − O) / 31) × ((30 − O) / 30)
組み合わせで表した同じ確率:[C(31,2) − C(31 − O,2)] / C(31,2)
最後の式なら、全数検証の意味が見えます。ターン・リバーの順序を区別しない組み合わせはC(31,2) = 465通り。そのうち少なくとも1枚がアウツである組み合わせを数え、465で割ります。1〜20アウツの全結果はCSVでもダウンロードできます。
「×6」は何アウツからずれるのか
画面が狭い場合は、表を横にスクロールできます。誤差の単位はパーセントではなく、確率どうしの差を示す「ポイント」です。
| クリーンアウト | 次の1枚(正確) | ×3 | リバーまで(正確) | ×6 | ×6の誤差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 3.23% | 3% | 6.45% | 6% | −0.45ポイント |
| 5 | 16.13% | 15% | 30.11% | 30% | −0.11ポイント |
| 8 | 25.81% | 24% | 45.59% | 48% | +2.41ポイント |
| 9 | 29.03% | 27% | 50.32% | 54% | +3.68ポイント |
| 13 | 41.94% | 39% | 67.10% | 78% | +10.90ポイント |
| 15 | 48.39% | 45% | 74.19% | 90% | +15.81ポイント |
| 17 | 54.84% | 51% | 80.43% | 102% | +21.57ポイント |
暗算の目安はこうです。1〜7アウツなら、×6と正確値の差は最大1.36ポイント。8アウツで2ポイントを超え、その後は急速に広がります。17アウツでは102%というあり得ない値になり、暗算の限界がはっきり表れます。表の×3が常に少し低めなのは、フロップから次の1枚を引く確率が1アウツあたり1 / 31 = 3.2258%だからです。ターンからリバーでは1 / 30 = 3.3333%になります。
なぜアウツが多いほど「×6」の誤差が広がるのか
×6は、「1枚につき約3%」をターンとリバーの2回分そのまま足した近似です。一方で、1 / 31を3%に丸めるため低めに出る効果と、2枚ともアウツになる組み合わせを二重に数えるため高めに出る効果が同時に働きます。アウツが少ないうちは前者が勝ち、6アウツ以降は重複の影響が上回ります。「リバーまでに完成する」は、一度でも当たれば1回の成功だからです。
8アウツを例にします。全465通りのうち、2枚とも外れる組み合わせはC(23,2) = 253通り。少なくとも1枚当たるのは残りの212通りです。
8アウツの全数チェック
(465 − 253) / 465 = 212 / 465 = 45.59%
近似は8 × 6 = 48%なので、2.41ポイント高く見積もります。
アウツ数が増えるほど「2枚ともアウツ」の重なりも増えるため、誤差は一定ではなく加速します。
ショートデッキの具体例を2つ
フラッシュドロー:同じスートの残り5枚
ショートデッキでは1スートが9枚です。2枚のホールカードと、フロップ3枚のうち2枚が同じスートなら、その9枚中4枚が見えています。残る同スートは5枚。5枚すべてがクリーンなら次の通りです。
- 次の1枚:5 / 31 = 16.13%
- リバーまで:1 − (26 / 31) × (25 / 30) = 30.11%
- 暗算:5 × 3 = 15%、5 × 6 = 30%
ここは3と6の法則が最もよく機能する場面です。ただし意外な比較もあります。通常のホールデムのフラッシュドローで、9枚すべてをクリーンなアウツとみなせるなら、リバーまでに約34.97%。ショートデッキは見えていないカードが少ない一方、1スートの総枚数も少ないため、5アウツのフラッシュドローは30.11%にとどまります。
クリーンなオープンエンド・ストレートドロー:8アウツ
ストレートを完成させるランクが上下に1つずつあり、各ランク4スートがすべてクリーンなら8アウツです。次の1枚で25.81%、リバーまでに45.59%。同じ8枚でも36枚デッキ内では密度が高くなりますが、×6は正確値より2.41ポイント高めの近似です。
ターンを外した後は、見えていないカードが30枚に減っています。8アウツがそのまま残るなら、リバーで当たる確率は8 / 30 = 26.67%。フロップ時点の分母を持ち越さず、計算し直してください。
ショートデッキでは確率より先にクリーンアウトを数える
式が正確でも、入力が間違っていれば答えは使えません。アウツ数を次の順に点検します。
- ダーティアウト:自分のドローは完成しても、同時に相手のより強い役を完成させたり、ターンで相手に強いリドローを残したりするカードです。単純式のクリーンアウトからは除外し、判断が微妙なら相手レンジを含むエクイティ計算で評価します。
- 重複:ペアとストレートを同時に完成させるカードも、物理的には1枚です。2アウツとは数えません。
- 変化するアウツ:ターンによってリバーのアウツが増減するなら、Oが一定という前提の式では分岐を表せません。
- 既知のデッドカード:表向きになったカードなど、既知のデッドカードがあれば、未知カードの総数からその枚数を引きます。その中にアウツが含まれる場合は、アウツ数も減らします。
- ハウスルール:採用する役順が違えば、目標とする完成役の価値も変わります。
アウツの見つけ方そのものは、ポーカーのアウツとオッズの基礎ガイドで確認できます。本稿の違いは、36枚デッキの分母とクリーンアウトの見直しに範囲を絞った点です。
ショートデッキの完成確率はハンドエクイティではない
混同しやすい3つの数字を分けておきましょう。
- ドローの完成確率:アウツとして数えたカードのいずれかを引く確率です。
- ハンドエクイティ:相手レンジに対して見込めるポットの取り分です。ドローを引かずに勝つことも、引いてなお負けることもあります。
- 必要エクイティ:将来のアクションとレーキを無視した単純モデルでは、コール額をコール後の総ポットで割って求める損益分岐点です。
3と6の法則が答えるのは最初の問いだけです。完成確率をアクションに変える前に、ポットオッズと必要エクイティ、そして妥当な相手レンジを確認してください。
補足:役順の背景となる5枚役の出現頻度
36枚への縮小は、役の出現頻度も変えます。役の出やすさだけを比較するため、7枚から選ぶ最終的なベストハンドではなく、5枚の組み合わせを全数列挙しました。
| 5枚役 | ショートデッキの通り数 | 確率 | 52枚デッキの通り数 | 確率 |
|---|---|---|---|---|
| フラッシュ(ストレートフラッシュを除く) | 480 | 0.1273% | 5,108 | 0.1965% |
| フルハウス | 1,728 | 0.4584% | 3,744 | 0.1441% |
ショートデッキの5枚組み合わせ376,992通りでは、フルハウスは1,728通り、ストレートフラッシュを除くフラッシュは480通りで、フルハウスのほうが3.6倍多く出現します。52枚デッキでは、この関係が逆転します。この頻度差は、本稿で採用したPokerStarsとKKPokerの役順と整合しますが、各運営がその役順を採用した理由のすべてや、7枚から選ぶ最終的なベストハンドの頻度を説明するものではありません。標準的な役順との違いはポーカーの役一覧と並べると確認しやすくなります。
判断前の5ステップ
- デッキ、役順、強制ベットのハウスルールを確認する。
- 物理的なアウツを重複なく数え、ダーティアウトは除外する。判断が微妙なカードは、相手レンジを含むエクイティ計算で評価する。
- アウツ数が少ないときは×3/×6で素早く概算する。
- 8アウツ以上なら、完成確率を正確な式で確認する。コール判断が微妙な場合は、相手レンジに対するハンドエクイティを別途計算する。
- 完成確率、ハンドエクイティ、必要エクイティを別々に扱う。
計算の考え方を理解したあと、ショートデッキの判断を反復練習したい場合は、Short Deck Poker Trainerが学習の選択肢になります。2026年8月27日時点の日本のApp Store掲載情報では、Short Deck Academy、確率に関する教材、エクイティ計算機、プリフロップチャートとトレーニング機能が案内されています。「言語」欄には英語のみと記載されています。リアルマネーを賭けるサービスではなく、学習・シミュレーション用のアプリです。
参照元と再現方法
- PokerStars公式6+ホールデムルール — 2026年8月27日参照。
- PokerStars Learn「6+ホールデムのルールと役順」 — 2026年8月27日参照。
- KKPoker公式「ショートデッキ(6+)」ルール — 2026年8月27日参照。
- Short Deck Poker Trainer(日本のApp Store) — 2026年8月27日参照。
方法:アウツ数1〜20のそれぞれについて、31枚の未知カードのうちO枚をアウツと置き、ターン・リバー2枚の順序を区別しない465通りの組み合わせをすべて列挙しました。少なくとも一方がアウツなら、その組み合わせを成功として1回だけ数え、数式による結果と照合しました。さらに、別のPython実装でも同じ計算を再現しています。乱数や非公開のプレイヤーデータは使っていません。グラフとCSVは、この結果から直接生成しました。