ポーカーのサイドポット計算:ポットごとの取り分とコールEV
サイドポットの計算では、「いくら入っているか」と「誰が獲得できるか」を分けます。さらにコールを検討するなら、エクイティ(平均取り分)もポットごとに計算します。相手2人の両方に勝つ確率を総ポットに掛けるだけでは、メインポットに負けてもサイドポットを取れる結果が抜け落ちます。
まず50・200・200チップの例でポットを分け、そのあと具体的なハンドのリバー42通りをすべて確認します。計算はテーブルを離れて行う復習用です。実戦のハンド履歴やプレイヤーデータではなく、仕組みを説明するために作った例を使います。
本記事はGTO Geckoが制作しています。後半で紹介するFeltedもGTO Solutions ASの製品です。数値は記事用に独立して計算したもので、アプリの成績や収益を示すものではありません。
50・200・200チップなら、メイン150・サイド300
1ハンドで最終的に入れた額が、Aは50チップ、Bは200チップ、あなたも200チップだったとします。Aはオールインし、3人ともフォールドしていません。ここではアンティやレーキはなく、ブラインドなど既に入れた額もこの総額に含めます。
- メインポット:50 × 3人 = 150チップ。A・B・あなたが獲得できます。
- サイドポット:(200 − 50)× 2人 = 300チップ。Bとあなたの間だけで勝者を決めます。
Aが最も強いハンドでも、取れるのは150チップまでです。残る300チップはBとあなたで比較します。PokerStarsの公式説明も、サイドポットを獲得できるのはそのポットに参加した人だとしています。日本語の基本例はZyngaの公式ヘルプでも確認できます。
ハンドを再計算するための手順
- ハンド全体の投入額を書く。今のストリートのベット額や、残りスタックとは別です。フォールドした人の投入額も残します。
- 投入額を小さい順に並べ、0→50→200のように区切る。各区間の差額に、その区間の上限以上を入れた人数を掛けます。
- 各ポットを獲得できる人を書く。その区間の上限以上を入れ、まだフォールドしていない人です。
- 1人だけが出した超過分を返す。誰にもコールされていない部分は、争うポットに含めません。
- 合計を照合する。全ポットと返却額の合計が、全員の投入総額と一致するか確認します。
投入額が50・120・200なら、50 × 3 = 150、次に(120 − 50)× 2 = 140です。最後の200 − 120 = 80は返却。150 + 140 + 80 = 370チップになり、元の50 + 120 + 200と一致します。未コールの返却分を除けば、獲得できる人が同じ隣接部分は、1つのポットとしてまとめられます。
自分のハンドで試すときは、コピーして使える日本語ワークシート(テキスト)に、投入額・フォールドの有無・各ポットの参加者を書き込んでください。計算用の記録欄は次の形です。
各ポットについて記録する項目
ポットの額 → 獲得できる人 → 自分のエクイティ → 額 × エクイティ
そのあとに、未コールの返却額と、これから追加で払うコール額を別々に記録します。相手のハンドが不明な箇所は、仮定したレンジとその根拠も残してください。
同じハンドでも、メインとサイドのエクイティは違う
エクイティとは、残りのカードを配り終えたときにそのポットから平均して受け取る割合です。引き分けなら等分された取り分を含めます。サイドポットがあると、比較する相手がポットごとに変わります。
検算用のターン例:ノーリミットホールデム、ボードは1つ
ボード:J♣ 7♦ 2♠ 4♥
A(SB):A♠ A♥
B(BB):Q♠ Q♥
あなた(BTN):K♠ K♥
Aは既に50チップでオールイン。Bとあなたも50チップずつ入れていて、残りは各150チップです。ターンでBが150チップをオールインし、あなたは150チップのコールを検討します。コール後は全員のベットが終了し、メイン150・サイド300になります。
これは全員のハンドが判明したあとの復習を想定した例です。判断時に相手のAAやQQが見える、という意味ではありません。アンティ・レーキは0で、賞金配分は計算しません。
既知のカードはホールカード6枚とボード4枚。この10枚を除いたリバーの候補は52 − 6 − 4 = 42枚です。メインでもサイドでも、この同じ42枚を使います。
狭い画面では表を横にスクロールできます。
| リバー | 候補数 | メイン | サイド | あなたが受け取る額 |
|---|---|---|---|---|
| K♣・K♦ | 2枚 | あなた | あなた | 450チップ |
| Q♣・Q♦ | 2枚 | B | B | 0チップ |
| 上記以外 | 38枚 | A | あなた | 300チップ |
このボードでは、Kが出ればあなたのスリーカードが両方のポットを取り、QならBが両方を取ります。それ以外ではAAがメインを取り、KKがQQに勝ってサイドを取ります。役の比較を確認したい場合はポーカーの役一覧を参照してください。
したがって、あなたのメインのエクイティは2 / 42 = 4.76%、サイドは40 / 42 = 95.24%。メインで大きく負けているという事実だけでは、コールの計算は終わりません。
コールEVは「各ポットから受け取る額の期待値 − 追加コール額」
コール後に追加のベットがなく、各ポットの額が確定しているなら、各ポットの期待値を足せます。メインとサイドで勝つ結果が独立している必要はありません。
受け取るチップの期待値(投入済みの分を含む)
(2 / 42) × 150 + (40 / 42) × 300 = 約292.86チップ
ここからのコールEV
292.86 − 150 = 約+142.86チップ
引くのは、これから払う150チップです。既に入れた50チップをもう一度引くと、「今コールするか」という判断と、ハンド全体の収支が混ざります。この+142.86は、フォールドを基準にした追加コールの期待値であって、実際に受け取る額ではありません。
フォールドした場合、Bの新たな150チップは誰にもコールされないため、Bに返却されます。既にあるメイン150はAとBで争い、あなたのハンド全体の収支は−50チップです。コールした場合のハンド全体の期待収支は、292.86 − 200 = 約+92.86チップ。この差、92.86 − (−50) = 約+142.86チップが、ここからコールすることの期待値です。
一方、相手2人の両方に勝つ4.76%を450チップ全体に掛けると、(2 / 42) × 450 − 150 = 約−128.57チップになります。これは「Aに負けるが、Bには勝って300チップを取る」38通りを見落とした計算です。
サイドで必要なエクイティも確認する
メインのエクイティを2 / 42に固定すると、コールEVが0になるサイドのエクイティは、(150 − (2 / 42) × 150)/ 300 = 10 / 21 ≈ 47.62%です。追加コール額からメインで受け取る額の期待値を引き、サイドの額で割っています。次の表の40%・50%・60%は感度を見るために置いた仮の入力で、上のハンドから得た数値でもソルバーの結果でもありません。
| サイドのエクイティ(平均取り分) | ここからのコールEV |
|---|---|
| 40%(仮定) | −22.86チップ |
| 50%(仮定) | +7.14チップ |
| 60%(仮定) | +37.14チップ |
| 40 / 42 ≈ 95.24%(上の例) | +142.86チップ |
フォールド・引き分け・返却で間違えやすい点
フォールドした人のチップもポットに残る
50・200・200の3人に加えて、Dが100チップを入れてからフォールドしていたとします。メインは50 × 4 = 200チップ、残りのサイドは350チップです。Dの100は残りますが、Dはどちらも獲得できません。「サイドだけをフォールドして、メインへの権利を残す」とは扱いません。
引き分けは各ポットで別々に処理する
元の150・300のポットで、別のショーダウンを考えます。Aが最強、Bとあなたが同じ強さなら、Aがメイン150を取り、サイド300はBとあなたで150ずつに分けます。Poker TDAのルール21も、サイドポットは別々に分けると定めています。端数チップの実際の配り方は大会・店舗のルールを確認してください。期待値で使う小数は、実物のチップを小数に割るという意味ではありません。
余った額と、既にコールされた額を混同しない
返るのは誰にもコールされなかった超過分です。既にマッチしたチップは、あとでフォールドしたからといって返りません。TDAのルール15B・65Aも、コール済みの額と未コールの額を区別しています。
この計算を実戦の答えにしないために
- 相手が不明なら、必要なのはレンジです。特定のAA・QQだけで計算した結果を、未知の相手へのコール指示にはできません。
- サイドの計算でも、Aの既知のカードは戻しません。Aを勝者の候補から外しても、A♠・A♥はデッキから除いたままです。単にAを削除したヘッズアップ計算とは条件が違います。
- 追加ベットがあるなら、今のエクイティだけでは足りません。将来払う額、相手のフォールド、ポットが増える経路も必要です。
- チップEVと賞金EVは別です。ICM、バウンティ、レーキ、複数ボードはこの例に含めていません。
- アンティや特殊な裁定は別に確認します。特にビッグブラインドアンティなど、1人がまとめて払う方式を通常の個人ベットとしてこの表に入れないでください。
Feltedのハンド履歴で、投入額の整理を練習する
ベットの流れを復習する材料には、Feltedの日本向けApp Store掲載ページで案内されている、AI相手のテキサスホールデムとアクションログ付きハンド履歴が使えます。2026年8月28日に確認した掲載バージョンは1.6.0、対応言語欄は英語・スペイン語です。チップに換金価値はありません。
終わったハンドを1つ選び、各人の投入総額を書き出して、ポットと獲得できる人を分けてみてください。これは履歴を見ながら自分で行う練習であり、この記事の場面をそのまま設定できる、あるいはサイドポットのEVをアプリが自動計算するという紹介ではありません。練習の組み立て方はポーカーの復習・ドリルの作り方も参考になります。
計算ツールを使うのはテーブルを離れた学習時間に限ります。大会では適用ルールを守り、プレイ中の補助についてはソルバーとRTAの境界も確認してください。
計算方法・データ・出典
記事の例では残り42枚を1枚ずつリバーに置き、各プレイヤーの7枚から作れる5枚組21通りを比較しました。そのうえでメインとサイドの勝者を別々に決めています。ランダム抽出はしていません。別実装のPythonでも検算し、返却・フォールドした人の投入額・引き分けの例も照合しています。
- 全42枚のリバーと獲得結果(CSV)。Hは「あなた」、カードのc・d・h・sはクラブ・ダイヤ・ハート・スペードを表します。
- ハンド・投入額・計算結果と感度表(JSON)。
- PokerStars:サイドポットの参加資格 — 2026年8月28日確認。
- Zynga公式日本語ヘルプ:サイドポットの役割 — 同日確認。
- Poker TDA:公開中の2024年版ルール — 同日確認。実際のハンドの裁定は大会・店舗のルールに従います。
- Felted:日本向けApp Store — 同日確認。掲載内容の確認であり、アプリの日本語UIや全機能の実機検証ではありません。
全員が1つのポットを争うなら、その額に自分のエクイティを掛けて受け取る額の期待値を計算できます。サイドポットがあるときは、ポットごとの額・獲得資格・平均取り分を分けることが大切です。この3つを整理すれば、どの仮定がコールの答えを変えるのか確認できます。