ショートオールインでレイズ権は戻る?プレイヤー別に計算
ショートオールイン(フルベット額またはフルレイズの上乗せ額に満たないオールイン)が続いても、テーブル全体のレイズ権が一括で「戻る」「戻らない」と決まるわけではありません。すでにアクションしたプレイヤーごとに、最後のアクション後から現在までベット水準がどれだけ上がったかを計算します。上昇幅が最後の有効なフルベット額またはフルレイズの上乗せ額以上なら、ちょうど同額でもベッティングのリオープンとなり、そのプレイヤーは再びレイズできます。まだアクションしていないプレイヤーには、このリオープン比較は不要です。実際にレイズできるかは、残りスタックやポットリミット上限など通常の制約を別に確認します。
公式例の 100 → 125 → 200 では、Aは100でアクション済みなので 200 − 100 = 100。必要なフルレイズの上乗せ額100と等しく、Aはレイズできます。一方、125でコールしたCは 200 − 125 = 75 しか増えていないため、同じ200に直面してもレイズできません。
適用範囲:本記事はPoker TDA 2026 Rules v1.1のルール45・49を、ノーリミット/ポットリミットのオフテーブル復習用に整理したものです。大会・店舗が採用するルール、現場の事実認定、フロアの裁定が常に優先します。計算表やツールはライブ裁定の代わりにはなりません。
日本語のプレイヤー別計算ツールを開く — 数値が確定したハンドを、テーブルを離れて検算するためのものです。
判定に使う3つの数字
対象プレイヤーを1人決め、同じベッティングラウンドについて次の3項目を記録します。
| 記号 | 記録する値 | 注意点 |
|---|---|---|
W | 現在のベット水準 | その時点でアクションするプレイヤーが、コールするために合わせる最大総額。 |
L | そのプレイヤーが最後に自発的アクションを終えた直後のベット水準 | 本人が追加したチップ額ではない。ブラインドの強制ポストを「アクション済み」として扱わない。 |
R | 最後の有効なフルベット額またはフルレイズの上乗せ額 | ショートオールインでWが動いても、Rは置き換わらない。まだフルオープンがなければ、そのストリートの最小オープン額を使う。 |
すでにアクションしたプレイヤー:W − L ≥ R ならレイズ権が戻ります。等号を含みます。
まだアクションしていないプレイヤー:この式によるリオープン判定は不要です。実際のレイズ可否は、残りスタックと通常のベッティング規則を別に確認します。強制ブラインドをLとして式に入れません。
最小レイズ先:通常のフルレイズが可能なら W + R。レイズ権、残りスタック、ポットリミットの上限は別々に確認します。
ラウンドが変われば帳簿もリセットします。チェックはベット水準0での自発的アクションですが、ブラインドのポストは違います。また、式が閾値を満たしても、フォールド済み、オールイン済み、残りチップが最小レイズに足りない場合などの状態までは式だけで判断できません。
公式の100 → 125 → 200例
TDA 2026ルール49の追補例解は、50/100のNLHEをポストフロップから始めます。Aが100でオープンし、Bが合計125へオールイン、Cが125をコール、Dが合計200へオールイン、Eが200をコールします。
| 順番 | アクション | W | R | 記録 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Aが100でオープン | 100 | 100 | AのL = 100 |
| 2 | Bが125へオールイン | 125 | 100 | 増加25はショート |
| 3 | Cが125をコール | 125 | 100 | CのL = 125 |
| 4 | Dが200へオールイン | 200 | 100 | 増加75もショート |
| 5 | Eが200をコール | 200 | 100 | Aへアクションが戻る |
| 公式例 | 対象 | W − L | Rとの比較 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 例1 | 200に直面したA | 200 − 100 = 100 | 100 = 100 | フォールド、コール、レイズが可能。最小レイズ先は300。 |
| 例1-A:Aが200をコール | 200に直面したC | 200 − 125 = 75 | 75 < 100 | 75を追加してコールするか、フォールド。レイズ不可。 |
| 例1-B:Aが300へレイズ | 300に直面したC | 300 − 125 = 175 | 175 > 100 | レイズ権が戻る。最小リレイズ先は400。 |
Bの25とDの75は、単独ではどちらもフルレイズではありません。しかしAから見ると、最後のアクション後の累積上昇が100に達します。Cから見た上昇は75だけです。「ショートオールインが2回あったか」ではなく、いま判定する人のLから測るのがポイントです。
ショートオールインは最小レイズ幅を更新しない
ルール49の公式例2では、Aが300でオープンし、Bが500、Cが650、Dが800へ順にオールイン、Eが800をコールします。増加幅は200、150、150で、どれもフルレイズの上乗せ額300に届きません。未アクションのFは800をコールするか、少なくとも1,100へレイズできます。
ここで W = 800、R = 300 なので、最小レイズ先は 800 + 300 = 1,100。直近のショートオールイン幅150を使って950にすることはできません。複数のショートオールインは、すでにアクションした人のレイズ権を戻すことはあっても、最後の有効なフルベット額またはフルレイズの上乗せ額を上書きしません。
未アクションのBBと、不完全なオープンベット
ブラインドのポストは自発的アクションではない
公式例3-Aは2,000/4,000のプリフロップです。Aが4,000をコールし、Cが合計7,500へオールイン。BBは3,500の追加に直面しますが、4,000の強制ポストだけで、自分のオプションにはまだアクションしていません。したがってBBはフォールド、コール、または4,000以上を足して合計11,500以上へレイズできます。
BBが7,500をコールしただけなら、Aが直面する上昇は 7,500 − 4,000 = 3,500 で、R = 4,000未満。Aはレイズできません。BBが11,500へフルレイズすれば、Aは 11,500 − 4,000 = 7,500 に直面し、レイズ権が戻ります。
最小オープン額より小さいオールインでも、未アクションの人はレイズできる
次は境界を示す構成例で、TDAの番号付き公式例ではありません。最小オープン額100のストリートでAがチェックし、Bが50でオールインしたとします。Aは0でアクション済みなので、戻ってきた額は 50 − 0 = 50。R = 100に届かず、Aのレイズ権は戻りません。
一方、まだアクションしていないCにはレイズの選択肢があります。現在のWが50でも、フルオープン前のRは最小オープン額100です。したがって最小レイズ先は 50 + 100 = 150。R > Wになる状態を誤って除外しないようにします。
「50%ルール」は2つの別の場面を指す
| 問い | 適用する規則 | 50%の意味 |
|---|---|---|
| 出された額はコールか、レイズか | ルール45と、チップの出し方を扱う関連ルール | NL/PLで、オールインではない不完全なレイズが必要幅の50%以上なら、原則として最小レイズまで完成させる。50%未満なら、先に「レイズ」と宣言した場合などを除きコールとして扱う。 |
| すでにアクションした人のレイズ権が戻るか | ルール49-A(NL/PL) | 50%では足りない。戻ってきたときにフルベット額またはフルレイズの上乗せ額以上へ直面している必要がある。 |
| 固定リミットでレイズ権が戻るか | ルール49-B(Limit) | フルベット額またはフルレイズの上乗せ額の50%以上でリオープンする。 |
つまり、ショートオールインがフルレイズの上乗せ額の50%に達しただけで、NL/PLのアクション済みプレイヤーにレイズ権が戻るわけではありません。まず言葉やチップの出し方からアクションを分類し、その結果として確定したW、L、Rを使って別にリオープンを判定します。無言で単一の高額チップを出す動作などは先に関連ルールで分類されるため、すべてのチップ動作へ機械的に50%基準を当てはめることもできません。
計算だけでは決められないこと
- 言葉・チップ・動作の意味:「コール」「レイズ」「オールイン」のどれが成立したかは、現場の状況と適用ルールで認定します。
- 残りスタックとポットリミット上限:レイズ権があっても、通常の最小レイズを出せるとは限りません。ポットリミットの最大額も別計算です。
- サイドポット:レイズ権は、誰がどのポットを獲得できるかを決めません。アクション確定後はサイドポットの計算を別に行います。
- 大会固有の裁定:TDAルールはハウスルールを補うもので、ルール1ではフロア判断が最終です。運営規則や規制当局のルールと異なる場合は、そちらが優先されます。
ハンド履歴そのものに争いがあるなら、先に正確な順番、発声、出したチップ、残りスタックを記録し、フロアの裁定を受けます。裁定前の曖昧な入力を計算ツールで確定事項に変えることはできません。
計算を再現する
公開ファイルには公式例を正規化した入力と、等号、対応する最小単位だけ閾値を下回る値、未アクションのプレイヤー、強制ブラインド、不完全なオープン、後続のフルレイズなどの境界ケースが入っています。乱数、非公開ハンド履歴、顧客データは使っていません。
- 日本語のスタンドアロン計算ツール
- 入力・ルールセット・期待結果(JSON)
- プレイヤー別の公開結果(CSV)
- 独立したPython検算スクリプト
- 検算器が確認するモデル契約・限界(英語README、実行時に必須)
- 日本語の項目定義・実行手順・限界
JSON、CSV、Python検算器、英語のshort-all-in-reopening-README.mdの4ファイルを同じフォルダに置き、python short-all-in-reopening-verifier.pyを実行すると、ブラウザ計算ツールとは別に期待結果を検算できます。日本語READMEとHTML計算表は説明・操作用で、検算器の必須入力ではありません。これは確定した数値へのルールモデルを再現するもので、曖昧な実戦アクションを裁定する仕組みではありません。
ルール裁定とGTO学習は別の工程
まず大会・店舗の規則とフロア判断で、合法なアクション列を確定します。その後、テーブルを離れてスタック、ポジション、アクション列などの前提をそろえ、意思決定を研究するのが次の工程です。
日本向けApp StoreのGTO Gecko掲載情報では、事前計算済みのポーカースポットを閲覧し、シミュレーションされた学習シナリオで自分の選択を比較する学習用途が案内されています。この記事のリオープン計算ツールはGTO Geckoの機能ではありません。GTO Geckoにはルール裁定機能がなく、裁定機関でもありません。また、任意の局面をその場で計算するライブソルバーでもありません。裁定済みのイベントルールと、オフテーブルの意思決定学習を混同しないことが大切です。
要点
- アクション済みなら、プレイヤーごとに
W − L ≥ Rを確認する。等号でもレイズ権は戻る。 - 未アクションのプレイヤーにはリオープン比較は不要。ブラインドの強制ポストを自発的アクションとして数えず、実際のレイズ可否は通常の制約で確認する。
- ショートオールインは
Wを動かしてもRを置き換えない。最小レイズ先はW + R。 - NL/PLのリオープンはフル幅が必要。50%で戻るのは固定リミットで、ルール45の50%基準は別の分類問題。
- 実戦では大会・店舗の規則とフロア裁定を優先する。
出典
- Poker Tournament Directors Association, 2026 Poker TDA Rules release page — v1.1は2026年9月21日公開。Longform v1.1のルール45・49とIllustration Addendum例1、1-A、1-B、2、3-A、3-Bを2026年9月30日に確認。
- Poker Tournament Directors Association, View Poker TDA Rules, Procedures, & Addendum — ルール本文と例を読める公式Web版。同日確認。TDAは任意団体で、ハウスルールを補完し、フロア判断が最終とする範囲も確認。
- Japan Open Poker Tour, Poker TDA Rules 2026 ver 1.0 日本語版 — ルール45と追補例解第49項の日本語用語を同日確認。現行v1.1の根拠には英語版の公式Longformを使用。
- Apple, GTO Gecko 日本向けApp Store掲載情報 — 事前計算済みスポットとシミュレーション学習の範囲を同日確認。ルール計算ツールやライブ裁定機能の根拠には使用していない。
- GTO Gecko, 検証入力、公開結果、独立検算器、日本語方法資料 — プレイヤー別モデルと境界ケースの再現用。